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ガンガーの源への旅

 

『花の谷』を訪れるベースとなったゴビンドガートから、ジョーシナート、シュリナガル、テーリ、ウッタルカーシーを経由して、ガンガーの源を訪れるベースとなる町、ガンゴートリに向かう。場所的には同じ山の反対側で、直線距離だと百数十キロ程度と思われるが、道がないので一度下界の町まで下って大回りとなるのだ。バスを数回乗り継いで、3日がかりの行程となった。

 

625日 ウッタルカーシーからガンゴートリへ

 朝10時発のガンゴートリ行きバスに乗り込む。右側の席に座ったのですばらしい景色を楽しむことが出来た。道はずっとガンジス河に沿ってゆっくり高度を上げていく。だんだん山奥らしい景色になってきて、いつの間にか針葉樹林帯が続くようになる。午後4時ガンゴートリ着。山の新鮮な空気がうれしい。河のそばのGhanga Tourist Lodgeにチェックイン。ドミトリーで1泊約200円。

 

626日 ガンゴートリ滞在

 体調が思わしくなかったので、1日休養する。近くの森で森林浴をして、宿に帰ってから、行水、洗濯、読書。

 

627日 ガンゴートリからボージバーサへ

 体調がいまいちで疲れやすいので、ガンガーの源を訪れるベースとなるボージバーサまで、ポーターに荷物を運んでもらって歩くことにした。8時前、ポーターのケダル氏とともに出発。道はガンガーの右岸をゆるゆると登っていく。天気は曇りがちですっきりしなかったが、高山植物がとても多く、紫色の花や、白いバラのような木など、花や景色を楽しみながらゆっくり歩いた。途中アルプスのマーモットに似た小動物にもお目にかかる。道に沿って茶屋も何軒かあって、チャイを飲んで一休みもできる。やはり荷物がないのは楽ちんで、さしたる休みも取らず、4時間半ほどで標高3,700メートルのボージバーサに到着。巡礼者の泊まるアシュラム(道場)に泊まることにした。まわりは一面のお花畑で、すばらしいところだ。ここでケダル氏と昼食を取り、ケダル氏にポーター料70ルピー(約630円)を渡して、彼はガンゴートリに帰っていく。ところで、このアシュラム、出て行く時に何がしかの寄付をすればいいのかと思ったら、なんと予め51ルピー(460)を強制的に寄付させられてしまった。外国人からは別料金を取ることにしたらしい。私は物見遊山で来た異教徒だから、ある程度高い料金を取られても仕方がないが、151ルピーはちょっと高すぎる。明日は隣のTourist Bungalowに移動しようと思う。

 

628日 ゴームク(ガンジス河の源)訪問

 宿に荷物を置いて、午前中ガンガーの源、ゴームクを訪れた。道はさしたる登りもなく楽ちん。途中に茶屋もある。ゆっくり歩いて1時間半ほどで到着。巨大な氷河の末端に大きなトンネルが穴を開いていて、そこからガンガーの水が激しく流れ出ている。氷河の末端は、時折ドーンと大砲のような音を立てて崩壊し、崩れた大きな氷の塊がどんどん流されていく。何という荒々しさだろう。ゴームクにはサドゥ(修行者)が一人住んでおり、彼のそばに何人か外国人ツーリストが集まって話をしていたので、仲間に入れてもらってチャイをご馳走になり、少し情報交換。彼らはこのさらに上のタポバンという所まで行ってきたのだという。とても美しい場所だそうだ。だいたいの道を教わった。しばし歓談してから、ボージバーサのアシュラムに戻る。ここでしっかりと昼飯を食ってから、Tourist Bungalowに移動。ドミトリーで135ルピー(約320円)。夕食はターリーが12ルピー(110円)で腹いっぱい食えるのがいい。アシュラムよりも食事代を含めると若干高めになるが、ベッドで眠れるし、部屋は明るいし、トイレもあるし、環境はこっちの方が断然いい。

 

629日 ゴームク方面へ1日ハイキング

 朝5時半に起きると、快晴のいい天気だ。タポバンまで日帰りで行くつもりで、朝食後7時に勇んで出発。1時間10分ほどでゴームクの分岐点へ。ここから道を離れ、踏み跡を登っていく。氷河の右岸に沿ってまっすぐに行ってしまったのだが、これは実はタポバンではなく、ナンダバンに向かう道だったのだ。どうも話と道の雰囲気が違うなぁと思いつつ、そのまま進んでしまった。踏み跡は途絶えがちで、所々クレバスが不気味な口を開けており、崖下を通る道で危険この上ない。10時半、ゴームク分岐から2時間以上歩いた地点で、やはり道を間違えたと観念し、引き返すことにした。せっかくだからと山の写真など撮っていると、ナンダバンに荷物を取りに行くというガイドとポーターが通りかかり、彼らの話でこの道が違うことがはっきりした。景色の良いところだったので岩の上でしばらくゆっくりしてから、12時ごろ撤退開始。時々踏み跡を見失いながらも慎重に下山し、2時間ほどで無事ゴームクに辿りついた。昨日のサドゥと少し話をしてから、4時半頃無事ボージバーサのTourist Bungalowに戻った。

 

630日 タポバンへの1日ハイキング

 5時半起床。雨が降ったようで、完全にガスの中だ。だんだんガスが晴れてきたので、7時に出発。1時間ほどでゴームク分岐からタポバンへの道に入る。昨日確認した通り、大きな岩の所から右に曲がり、右の滝川を目指す。踏み跡は不明瞭で時々見失ったが、やがて道がはっきりしてきて滝川の正面に来る。ここから滝川の左側(右岸)に沿って急な道を登っていくと、やがていきなりタポバン台地の端に出た。標高4400メートル。草原が伸びやかに広がり、花々が咲き乱れ、正面には巨大なシバリンガ山(6500m)が聳え立ち、ここは本当に天上のパラダイスだ。天気もいつの間にか快晴となり、眺めは最高だった。この人里離れた別天地に石造りの山小屋のような建物があり、行ってみるとイギリス人女性に笑顔で迎えられ、チャイを振舞われた。ここはアシュラム(修行道場)で、彼女は夏の間の6ヶ月間、毎年ここに滞在して瞑想しているのだそうだ。その後、タポバン台地の向こう端、シバリンガ山に向かってしばらく歩いてみるが、見た目よりずっと広くて、数十分歩いてもシバリンガ山のふもとまで辿りつかなかったので、引き返した。正面にはバギラーティ峰が聳え、足下には荒々しい氷河を見下ろし、草原には花々が咲き乱れ、ここは本当に神々の楽園だ。1時間半くらい歩き回ってからイギリス人のいるアシュラムに戻ってみると、彼女は親切にも昼食を振舞ってくれた。こんな山奥で、見ず知らずの旅人に対する心からの親切に、感謝の気持ちで一杯になる。しばし歓談してから、帰途につく。天候はだんだん悪化してきており、風が強くなっている。しばらくすると瞬く間にガスに包まれてしまい、雷が鳴って雨が降り出した。雨具を着て慎重に氷河の上の踏み跡を辿っていく。やがてあっけなくゴームクを見下ろす場所に出て、無事ゴームク分岐に到着。4時半頃ツーリスト・バンガローに戻った。

 

71日 ボージバーサからガンゴートリへ

 7月の訪れとともに、この一帯も雨季に入ったようだ。今日は朝から重苦しい曇り空で、やがて雨が降り出す。数日間滞在したTourist Bungalowに別れを告げ、ガンゴートリへと下山する。花の谷、ヘームクンド、ゴームク、そしてタポバン。本当にすばらしいトレッキングを楽しむことが出来た。自然もすばらしかったが、旅の途中で出会った様々な人々…巡礼たち、登山者、修行者など…との交歓も思い出に残るものだった。全てを優しく包み込むような、インドの大自然。いつまでも変わらずにいて欲しいと願いつつ、旅は続くのだった。

1990年に旅行した当時の日記からまとめてみました)

 

インドヒマラヤ写真館『ガンガーの源への旅』500k)もあわせてご覧下さい。

 

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